はじめに
この記事では、Cisco、YAMAHAルータを利用した簡易的なダイヤルアップ接続環境の構築方法を紹介します。ダイヤルアップのあの音を楽しみたい、インターネットの歴史を感じたい、速度が遅く遅延が大きい環境を実際に作りたいという方におすすめです。
必要なもの
自宅で簡易的なダイヤルアップ接続環境を構築するには、
・モデム
・電話交換機となるデバイス
・電話ケーブルx2
・PPPクライアント用PC
が必要です。
モデムは、Amazonから適当なUSB接続のモデムを購入しました。
電話交換機となるデバイスとしては、YAMAHA NVR500を利用しました。NVR500には内線機能があり、電話番号はTEL1ポートの電話が*1、TEL2ポートの電話が*2となっています。
さらに、PPP接続をする場合はモデムがあり、PPPサーバになれるルータあるいはPCが必要です。WindowsのPCでも構いませんが、私はCisco 891FJを利用しました。このルータは電話ポートを搭載しており、1回使ってみたいとずっと思っていたからです。
電話ケーブルはRJ-11(6極2芯)のものを2本用意しました。
構築
Cisco 891FJのインターフェース
Cisco 891FJにはLAN側スイッチポートの左隣に、V.92対応の電話ポートがあります。今回はこれを利用します。
デフォルトの設定ではなんと!このポートはコンソールへのアクセスに利用することができます(line 3に割り当て)。つまり、モデムから電話をかけるとコンソールにアクセスできるということです。
Cisco 891FJではこのポートを利用してネットワーク通信を行う際はAsync3インターフェースを使用します。
構築前のテスト
モデム、NVR500、891FJを以下の図のように接続します。
録音アダプタを使用する場合は、適切な場所に設置してください。
モデムのコンソールをTeraTermやscreenなどで開き(ボーレートは大概115200)、以下のATコマンドを入力してください(大文字で記載していますが、小文字でも可。詳しくは別途調べてください)。尚、打った文字は1つ目のコマンドを実行するまで表示されない場合があります。これはコマンドエコーが無効になっているからです。
AT&F (モデムの設定初期化)
ATDT*2 (*2にダイヤル、ダイヤル方式にはトーンを利用)
しばらくすると891FJのコンソール画面につながるはずです。
切断するには、ログイン前はEnterを連打、ログイン後はexitを入力します。あるいはエスケープ文字(+++)を打ってから、切断コマンド(ATH)を打ちます。
Cisco 891FJの設定
PPPサーバの設定をします。
Config中のパラメータは以下の通りです。適宜変更してください。
パラメータ | 値 |
---|---|
PPPユーザ名 | ppp-test |
PPPパスワード | ppp-test |
ip unnumberedに使用するI/F | Loopback2 |
dialer-group | 2 |
PPP認証方式 | CHAP |
PPPクライアントアドレスプール | pool-ppp |
PPPクライアントへ割り当てるアドレス | 192.168.120.10-15 |
以下に設定例を示します。PPPクライアントのPCをインターネットに繋げる場合は、これに加えてその設定も適切に行ってください。
username ppp-test password ppp-test ! interface Loopback2 ip address 192.168.120.1 255.255.255.255 ! interface Async3 ip unnumbered Loopback2 encapsulation ppp dialer in-band dialer idle-timeout 0 dialer-group 2 peer default ip address pool pool-ppp async mode dedicated ppp authentication chap callin ! ip local pool pool-ppp 192.168.120.10 192.168.120.15 dialer-list 2 protocol ip permit
PCへのダイヤルアップ接続のセットアップ
PPPクライアントとなるPCにてダイヤルアップ接続の設定を行います。大体の方法は調べればたくさん出るかと思いますので、そちらを当たるとよいでしょう。
設定の際の注意事項:
・ダイヤル方式を確かめてください。電話の仕様上「プッシュ」に設定しないと*と#の入った電話番号にダイヤルできません。
・認証方式が正しいか確かめてください。上記の例ではCHAPです。
・仮想マシン経由でモデムを利用している場合は、モニタースピーカ(電話をかける時にPCのスピーカーから音の様子を聞ける機能)はオフにしといたほうがいいかもしれません。自分の環境では雑音だけが出たので。
接続テスト
構築前のテストに記載の手順をもう一度実行し、コンソールにアクセスできないこと(文字化けしたような内容が表示されること)を確認します。コンソールでATHを打って切断します。
その後、実際にクライアントからダイヤルアップ接続を開始して確かめます。
通信が可能になると891FJ前面のV.92ランプが点灯、Async3インターフェースがUpします。
PPP接続が完了すると、PPPランプも点灯します。
後はPingするなり適当なサイトにアクセスするなりして通信できることを確かめます。
切断
接続を終了する場合は、必ず切断処理を行ってください。
実際の接続の様子
実際に環境を構築し、Windows98SEから接続を行った際の様子です。V.34(21600bps)での接続です。
最後に
ATコマンドを駆使して使用する通信規格を制限する(AT+MS=コマンド)と、それに応じて音も変わってきます。音にこだわりのある方は一度やってみてください。
V.90、V.92はISDN回線でないと実現できません。つまりこの方法ではできないということです。